新型コロナウイルス 専門家見解
新型コロナウイルスはパンデミックしない 専門家「2月末~3月には終息するはず」 日本の元気 山根一眞
2020.2.15

新型コロナウイルスによる感染拡大で、社会的なパニック状態が巻き起こっている。だが2月5日、WHO(世界保健機関)が「新型ウイルスはパンデミック(世界的流行)を引き起こしていない」と会見で語った。
「WHOは何をのんきなことを言っているんだ」と受け止めた人もいたかもしれない。だが、かつてWHOのインフルエンザ・呼吸器ウイルス協力センター長としてウイルス感染症の拡大防止に豪腕をふるった根路銘(ねろめ)国昭さん(現・生物資源研所所長、沖縄県)も、「WHOの見解は正しい。パンデミックな状態ではなく、コロナウイルスの特性から2月末から3月には終息するはず。危機をあおりたてる傾向が強いことを憂慮している」と語っており、今、その緊急インタビュー記事をまとめているところだ。
メディアも含め多くの人たちは、今回の新型コロナウイルス(2019n-CoV)による感染を、2009年の新型インフルエンザ(H1N1)によるパンデミック(世界的流行)と重ね合わせているのではないか。
11年前の新型インフルエンザウイルスには、1918年に5000万人が亡くなったインフルエンザ=スペイン風邪のウイルスの遺伝子の一部が組み込まれていたため世界は慄然とした。世界で約1万4000人、日本では203人が亡くなったからだ(根路銘さんによれば、この09年もパンデミックではなかった)。
だが、感染力が強いインフルエンザウイルスとコロナウイルスは違う。毎年、当たり前のように鼻かぜなどを起こしているのがコロナウイルスで、私たちはコロナウイルスとともに生きてきたのだ。
長年懇意にしていた日本を代表する小児科医で母子手帳の創案者である故・巷野悟郎さんが、「子供は赤ちゃんの時から200回は風邪をひき、たくさんの免疫を身につけている。そのおかげで大人になってから風邪をひきにくくなる」と語っていたことが忘れられない。その風邪とはコロナウイルスが原因なのだ。
今、巻き起こっているパニック状態は、専門知識を持たない人たちの記事や情報発信(発信者自身がパニック状態になっているなと感じる)が圧倒的な一方で、コロナウイルスやそれによる感染症に対する正しい知識を伝える取り組みが乏しいことが原因と思えてならない。
コロナウイルスの表面にはたくさんのトゲがあり、それを肺の細胞に突き刺し、自らの設計図であるRNA(リボ核酸)を注入し、健康な細胞の中の材料を使って自らの複製を大量生産する。そして大量の複製ウイルスが細胞の壁を破って飛び出し、玉突き式に増殖する。
だが根路銘さんによれば、そもそもコロナウイルスのトゲは脆弱で抜けやすいので、例えば風の流れで窓の外へ出せば2メートル以内で死滅する。水に溶かした1%程度の中性洗剤やせっけん水(界面活性剤)を噴霧するだけでも効果はある。根路銘さんは、沖縄に多く自生する植物、センダンにウイルス殺傷効果が高いことを発見し多くの論文を発表、製品化にも取り組んできた。つまり、防ぐ手立ては十分にあるのだ。
社会的なパニックは正確な情報がない時に大きくなる。メディアも正しい知識を真摯に探り、冷静な対処法を見極め早期終息のために尽力してほしい。
■山根一眞(やまね・かずま) ノンフィクション作家、福井県年縞博物館特別館長。愛地球博愛知県総合プロデューサーなど多くの博覧祭も手がけてきた。近刊は『理化学研究所 100年目の巨大研究機関』『スーパー望遠鏡「アルマ」の創造者たち』。「山根一眞の科学者を訪ねて三千里」(講談社)を連載中。理化学研究所名誉相談役、JAXA客員、福井県交流文化顧問、獨協大学非常勤講師、日本文藝家協会会員。
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