市場調査(日本経済新聞)

新型肺炎、マスク以外も販売増、除菌スプレーなど

新型肺炎サービス・食品小売り・外食2020/2/15 12:30日本経済新聞

新型肺炎の感染予防として、ハンドソープなど衛生用品全般の需要が高まる(都内の販売店)

新型肺炎の感染予防として、ハンドソープなど衛生用品全般の需要が高まる(都内の販売店)

新型コロナウイルスによる肺炎の広がりを受け、マスク以外の衛生用品などの需要も急増している。空気清浄機の販売が家電量販店で伸びているだけでなく、ドラッグストアで食卓用アルコールスプレーやハンドソープなどを求める動きが増えている。消費者の予防意識が高まっている。

家電量販店大手のヨドバシカメラは2月に入り、空気清浄機の売り上げが前年と比べて1.7倍で推移する。「毎年、インフルエンザと花粉症の対策で販売が伸びる時期だが、今年は新型肺炎の影響でさらに買い求める来店客が多い」(同社)。パナソニックの空気清浄装置「ジアイーノ」など一般の空気清浄機より高い9万円前後の機種が売れ筋という。

都心部にある大型ドラッグストアでは、大幸薬品の除菌消臭剤シリーズ「クレベリン」が1月27日からの1週間で前週比3倍の売れ行きに伸長した。ドラッグストア大手のココカラファインでは、うがい薬、ハンドソープなど新型肺炎の予防につながると期待される商品も前年比2倍の売れ行きで推移する。

コンビニエンスストアのローソンでも、2月に入ってウエットティッシュの売上高が前年同期間比3.6倍で推移。ハンドソープも2.2倍、マスクも2.9倍という。

日経POS(販売時点情報管理)で最新の状況を把握しやすいスーパーの日次の販売データの前年比を、日本国内で新型ウイルス患者を確認した1月16日以降で分析すると、同様の傾向が見える。「ハンドソープ・手洗い専用せっけん」(詰め替え含む)は2月に入って前年の2倍前後の売れ行きが続く。食卓用アルコールスプレーなど「その他キッチン用消臭・除菌剤」は1月末から高水準の売れ行きを示している。

百貨店でも同様の傾向がある。西武池袋本店(東京・豊島)では、除菌効果を期待できるスプレー(1320円)を2月から本格的に売り場に陳列した。10日までの販売本数は200本と19年の3倍近いペースで売れているという。

百貨店では抗菌作用が期待されるスプレーの販売が伸びている(東京都豊島区の西武池袋本店)

百貨店では抗菌作用が期待されるスプレーの販売が伸びている(東京都豊島区の西武池袋本店)

日用品メーカーも各商品を増産する検討などに入っている。ライオンの掬川正純社長は13日、「ハンドソープは直近の週では、前年比1.8倍くらいの売り上げ。生産量は1.5倍くらいに生産能力を拡大したい」と話した。

ジョンソン(横浜市)は台所や食卓用などアルコール除菌関連商品の1月27日~2月2日の販売個数が前年同期比で2.9倍となり、「増産するかどうか検討中」という。アース製薬も台所用アルコール除菌剤の出荷が2.3倍に伸び、生産スケジュールを早めて対応しているという。

家庭用だけでなく業務用でも需要が増えている事例がある。家電メーカーのダイニチ工業は13日、新潟市内にあるビジネスホテルの全室に100台超の加湿器を納入した。宿泊客からの要望が急増し、ホテルが常備していた貸し出し用の数台だけでは対応できなくなったためという。「政府が対策の一つとして湿度の確保を呼びかけている効果もあり、インフルエンザなどの予防にもつながるため需要が高まっているようだ」(ダイニチ工業)と、問い合わせが増えているという。